呼吸器疾患2
みなさん,こんにちは。
ちょっと梅雨らしくなってきましたね。
暑さはまだまだですが,ジメジメは来たという感じでしょうか。
画像は季節の花とでも言いましょうか(笑)。
これから,きれいになっていきますね。
まずは,前回の問題の解答・解説です。
問題1 マイコプラズマ肺炎は,子どもから大人まで感染します。
ただ,老人は肺炎球菌性肺炎が多いです。
×です。
問題2 マイコプラズマ肺炎は,子どもから大人まで健常者に多く発症します。
×です。
問題3 マイコプラズマは,ウィルスと細菌の中間ぐらいの微生物です。
×です。
問題4 マイコプラズマ肺炎は乾性の咳嗽が特徴です。
×です。
問題5 ○です。
問題6 ○です。
問題7 チール・ニールセン染色です。
○です。
問題8 ツベルクリン反応が陰性でも,陽性の場合があります。
粟粒結核などでは,陰転化します。
×です。
問題9 結核の治療には,イソニアジド,リファンピシン,ピラジナミド,ストレプトマイシンなどを使います。
×です。
問題10 リファンピシンの副反応(作用)です。
○です。
呼吸器疾患2になります。
今回取り上げるのは,閉塞性肺疾患と拘束性肺疾患です。
閉塞性肺疾患は,気道の閉塞(詰まって)によって肺への空気の流れが悪くなる病気の総称です。
閉塞性肺疾患では息が吐けなくなります。
具体的疾患には,肺気腫と慢性気管支炎が挙げられます。
3 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
COPDとはchronic(慢性) obstructive(閉塞性) pulmonary(肺の) disease(疾患、病気)の頭文字です。
日本語では,慢性閉塞性肺疾患と呼ばれる病気です。
COPDには,肺気腫と慢性気管支炎が含まれます。
(1) 概念
肺気腫は,呼吸細気管支と肺胞が拡張し破壊される疾患です。
肺胞の拡張,破壊により,息を吸うときには肺に空気が入っていきますが,吐き出すときにうまく空気が肺から出て行かなくなります。
また,肺胞の破壊のため,酸素と二酸化炭素の交換ができなくなります。
遺伝的要因として,α1-アンチトリプシン欠損症があります。
α1-アンチトリプシンは蛋白分解酵素阻害物質です。
α1-アンチトリプシンの主な作用は,好中球エラスターゼが肺胞に損傷を与えるのを予防することです。
エラスターゼはタンパク質を分解する作用があります。
そのため肺胞に損傷を与えてしまいます。
したがって,α1-アンチトリプシンがないと,肺胞が損傷を受け,肺気腫にかかりやすくなります。
ただ,日本での発症頻度は極めて低く,現在13家系の報告しかありません。
次に,慢性気管支炎は,気管支内における持続性あるいは反復性の粘液分泌の過剰状態をいいます。
慢性気管支炎には,休業補償のための定義があり,痰を伴う咳が連続して2年以上,毎年3カ月以上続くとされています。
いずれも,慢性の呼吸器疾患であり,死よりも恐ろしい病気として知られています。
ただ,こう言っても,気にしない人は気にしないんだよね。
どうせ先の話だからって言ってね。
粘液が気道に絡み付いています。
(2) 症状
① まず,肺気腫の自覚症状としては,咳,痰,運動時(労作時)の息切れ,喘鳴(ぜんめい),動悸などがあります。
② また,食欲不振による栄養失調により体重減少が起こる場合があります。
呼吸が苦しくて食欲がなくなるんだ。
そのぐらい苦しいんだよ。
③ 身体的な所見としては,呼気時の呼吸困難からチアノーゼを呈し,指先や唇などの皮膚が青紫色になります。
④ また,肺の弾力性がなくなり,吸気(息を吸うこと)はできるが,呼気(息を吐くこと)が十分に出来ないため,肺の中に空気が残り,肺が持続的に膨らんでいる状態になります。
これをビール樽胸郭といいます。
上の上の図の右側です。
⑤ さらに,手指または足指の末梢指節の軟部組織の腫大(しゅだい)によって,爪が太鼓のバチのようになることがあります。
これをばち状指(ばちじょうし)とか,ばち指(ばちゆび)といいます。
バチ爪(ばちづめ)という人もいます。
上図で指先が太く丸くなっているのが分かりますか。
慢性の心疾患・肺疾患などで見られます。
⑥ それから,肺の機能低下によって,肺の血管抵抗が増大します(肺の血の流れが悪くなります。)。
そのため,症状が進むと右心不全となり,静脈の流れが悪くなり肝臓が腫れる肝腫大(かんしゅだい)や末梢の浮腫(ふしゅ)・むくみ,頸静脈の怒張(どちょう)等が起こります。
これは,肺に血を送っているのが右心だからです。
これを肺性心といいます。
肺性心は,肺の機能低下が起こると生じます。
そのため,慢性閉塞性肺疾患,肺結核後遺症,肺線維症などで生じることになります。
次に,慢性気管支炎の症状では,起床時に咳をともなった粘液性の痰を出します(中年以降)。
① 粘液が過剰に分泌され気道が狭くなり呼吸がしにくくなるため,ちょっとした運動や過労などでもすぐに息切れするようになります。
② 肺気腫と同様に,チアノーゼやばち状指なども表れます。
呼吸困難の程度を客観的に表現する指標としてヒュー・ジョーンズ分類があります。
(3) 検査
COPDの検査は,「喀痰検査」と「肺機能検査」によって行われます。
喀痰検査では,朝,起きたときに出る痰を採取し,その量や色,粘度,細菌の有無,気管支壁からはがれ落ちた細胞や白血球などを検査します。
肺機能検査では,1秒率の低下を見ます。
1秒率が70%未満になると,COPDを疑います。
1秒率が低下するということは,息が吐けないということを意味します。
そのため,残気量の増加が見られます。
次に,他の病気との合併などを調べるために,胸部X線撮影やCT検査,血液検査なども行います。
胸部X線撮影では,ビール樽様に胸郭が変形したり,肺の膨張によって横隔膜が下がります。
上図は横隔膜が下がっている様子です。
さらに,膨張した左右に肺に挟まれて心臓は細長くなります。
これを滴状心(てきじょうしん)といいます。
(4) 治療
① COPDの原因は,多くの場合喫煙です。
したがって,第一に禁煙です。
② 次は薬物療法です。
まず,気管支を拡げるために,β2刺激薬(吸入・貼付),抗コリン薬,テオフィリンなどが使われます。
β2刺激薬は,交感神経のβ2受容体に作用して気管支を拡張させます。
抗コリン薬は,アセチルコリンの働きを抑制します。
私たちの身体には,迷走神経と呼ばれる副交感神経があります。
この迷走神経の末端から出されるアセチルコリンは,気管支を収縮させる働きがあります。
抗コリン薬は,このアセチルコリンの働きを抑制することで気管支を拡張させます。
テオフィリンはキサンチン誘導体になります。
気管支を広げるためには気管支の壁の筋肉「気管支平滑筋」をリラックスさせることが必要です。
キサンチン誘導体は気管支平滑筋の細胞に直接働いてリラックスさせ,気管支を拡張します。
次に,炎症を抑えるためにステロイド薬が使われます。
一般的には,吸入ステロイド薬が使われています。
プロピオン酸フルチカゾン(フルタイド),ブデソニド(パルミコート)などです。
さらに,感染による悪化を食い止めるために抗生物質が使われます。
また,痰を出したり溶かすために,去痰薬や去痰溶解薬も使われます。
去痰薬は,喀痰の粘りけが強いような時に補助的に用います。
③ 在宅酸素療法
COPDの症状が進行して,血中の酸素が不足すると呼吸不全になります。
高度の呼吸不全には,長期的な酸素吸入を行います。
ただし,肺気腫では肺胞で換気が十分に出来なくなり,低酸素血症(動脈血中の酸素が不足した状態)だけでなく,高炭酸ガス血症(動脈血中の二酸化炭素が溜まってしまう状態)でもあります。
そのため,高濃度の酸素吸入をを行うと,高炭酸ガス血症が悪化して中枢神経の抑制が起こり,意識障害となります。
いわゆる,CO2ナルコーシスです。
そのため,酸素吸入は低濃度の酸素から吸入させなくてはなりません。
また,鎮静剤の投与は呼吸を抑制するため,高炭酸ガス血症を悪化させます。
そのため,鎮静剤は禁忌とされています。
やってはいけないことですね。
④ 呼吸リハビリテーション
腹式呼吸は肺の負担を軽くしてくれます。
鼻から息を吸いお腹を膨らませ,吐くときは口をすぼめてゆっくりと吐きます。
いわゆる口すぼめ呼吸です。
口をすぼめることによって口腔内圧(口の中の圧力)が上昇します。
それは,気道(喉)にも波及します(気道の圧力も上がります)。
閉塞性肺疾患は,気道が詰まって(閉塞して)空気の通りが悪くなるのだから,この圧力によって詰まりが解消されます。
それで自然と口すぼめ呼吸をしてしまうんだ。
実際,肺気腫の患者には,息を吐くときに口をすぼめる人がいます。
また,テーブルに両腕をついて体を支え,前かがみになって行う呼吸が楽だと感じる人もいます。
これは横隔膜の機能を改善しようとしていることになります。
(5) 看護
看護のポイントとしては,気道を清潔に保つようにします。
そのための排痰や体位ドレナージ法を指導します。
看護の授業でやったでしょ。
それから,先ほどの腹式呼吸や口すぼめ呼吸などの指導です。
感染予防のための,うがいや,手洗いなどです。
咳嗽(せき)発作時には,起坐位をとらせるなどもあります。
最後は過去問です。
問題1 閉塞性換気障害を起こす疾患はどれか。
1 気管支喘息
2 肺気腫
3 肺線維症
4 粟粒結核
問題2 病変の進行とともに肺胞換気量は低下する。
問題3 肺気腫では1秒率が低下する。
問題4 初発症状には運動時呼吸困難が多い。
問題5 肺機能検査の結果は,拘束性障害を示し,肺活量は著明に減少している。
次は拘束性肺疾患です。
拘束性肺疾患は,肺が広がらなり小さく硬くなる疾患です。
そのため,肺活量が低下するので,1回の呼吸が浅くなる分を呼吸回数が増えることで代償します。
拘束性肺疾患には,間質性肺炎,肺線維症があります。
拘束性肺疾患では肺が硬くなるので息が吸えなくなります。
先ほどの閉塞性肺疾患では息が吐けなくなりますが,拘束性肺疾患では息が吸えなくなります。
どっちも,呼吸が苦しくなるね。
4 間質性肺炎(肺線維症)
(1) 概念
間質性肺炎は,肺胞壁が何らかの原因で炎症を起こし,次第に肺胞壁が厚くなるとともに硬い組織(線維化)へと変化する疾患です。
間質性肺炎とは,炎症に焦点をあてたもので,線維化に焦点をあてると肺線維症となります。
つまり,同じ疾患を炎症と線維化のどちらに重点を置くかの違いです。
また,特発性間質性肺炎とか特発性肺線維症と呼ぶ場合があります。
この場合の「特発性」とは,原因不明という意味で使われています。
間質性肺炎では,肺コンプライアンスが低下します。
肺コンプライアンスとは,物体が変形した時に元に戻ろうとする性質をいいます。
肺コンプライアンスが低下するとは,肺が伸展しなくなっているということです。
つまり,肺の膨張・収縮が妨げられ,「硬く」小さくなることを意味します。
その結果,肺のガス交換効率が低下して,酸素の拡散が妨げられます。
(2) 症状
この疾患では,痰のない咳(乾性咳嗽 かんせいがいそう)が一つの特徴となります。
痰は気管支や肺胞の炎症で分泌されるため,線維化すると出なくなります。
また,身体を動かした時に息苦しさがみられます。
さらに,患者の中には,ばち状指がみられる場合があります。
(3) 検査
胸部X線撮影やCTでは,すりガラス様の陰影が特徴的です。
進行すると,線維化を反映して蜂の巣状になっていきます。
これを,蜂巣肺(ほうそうはい)とか蜂窩肺(ほうかはい)といいます。
上図の肺のイラストのようになります。
また,胸部聴診音では,パチパチという捻髪音(ねんぱつおん)が知られています。
これは,マジックテープをはがす音に似ているため,メーカー(ベルクロ社)にちなんでベルクロラ音と呼ばれています。
さらに,呼吸器疾患のため,ばち状指が見られる場合があります。
(4) 治療
対処療法ではありますが,炎症を抑えるためにステロイドホルモン(プレドニゾン)や免疫抑制剤などが使用されます。
免疫抑制剤としては,アザチオプリン(イムラン),シクロホスファミド(エンドキサン)などがあります。
ただし,間質性肺炎に対しては,ピルフェニドンのみが有効性を証明しています。
これが特効薬になるのでしょうか?
また,呼吸不全に対しては人工呼吸器の導入なども行われます。
さらには,肺移植というところでしょうか。
(5) 看護
ステロイドや免疫抑制剤を使っている場合には,感染症予防が重要になります。
また,息苦しいですから,死の恐怖が強く起きます。
そのためのメンタルケアも重要です。
拘束性肺疾患では間質性肺炎または肺線維症を理解すれば十分ですが,塵肺(じんぱい)も拘束性肺疾患の一つです。
粉塵の吸入により肺の組織が線維化し,硬くなって弾力性を失ってしまった疾患です。
国試では通常出題されないので割愛します。
そして最後は過去問です。
問題6 特発性間質性肺炎(肺線維症)での患者は拘束性肺機能障害を起こす。
問題7 間質性肺炎では,炎症が気管を中心に起こり,細胞に及んでいる。
問題8 湿性咳は初期の結核,胸膜炎,肺線維症,肺気腫などにみられる。
問題9 胸部X線写真で横隔膜低位が間質性肺炎の特徴である。
問題10 特発性間質性肺炎(肺線維症)では呼吸不全に気をつける。
以上です。
国試には関係ないところもありましたが,いかがでしたでしょうか。
個人的には,言いたりないと感じています(笑)。
次回も呼吸器疾患です。
もう少し続きます。
みなさん,お疲れさまでした。
ちょっと梅雨らしくなってきましたね。
暑さはまだまだですが,ジメジメは来たという感じでしょうか。
画像は季節の花とでも言いましょうか(笑)。
これから,きれいになっていきますね。
まずは,前回の問題の解答・解説です。
問題1 マイコプラズマ肺炎は,子どもから大人まで感染します。
ただ,老人は肺炎球菌性肺炎が多いです。
×です。
問題2 マイコプラズマ肺炎は,子どもから大人まで健常者に多く発症します。
×です。
問題3 マイコプラズマは,ウィルスと細菌の中間ぐらいの微生物です。
×です。
問題4 マイコプラズマ肺炎は乾性の咳嗽が特徴です。
×です。
問題5 ○です。
問題6 ○です。
問題7 チール・ニールセン染色です。
○です。
問題8 ツベルクリン反応が陰性でも,陽性の場合があります。
粟粒結核などでは,陰転化します。
×です。
問題9 結核の治療には,イソニアジド,リファンピシン,ピラジナミド,ストレプトマイシンなどを使います。
×です。
問題10 リファンピシンの副反応(作用)です。
○です。
呼吸器疾患2になります。
今回取り上げるのは,閉塞性肺疾患と拘束性肺疾患です。
閉塞性肺疾患は,気道の閉塞(詰まって)によって肺への空気の流れが悪くなる病気の総称です。
閉塞性肺疾患では息が吐けなくなります。
具体的疾患には,肺気腫と慢性気管支炎が挙げられます。
3 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
COPDとはchronic(慢性) obstructive(閉塞性) pulmonary(肺の) disease(疾患、病気)の頭文字です。
日本語では,慢性閉塞性肺疾患と呼ばれる病気です。
COPDには,肺気腫と慢性気管支炎が含まれます。
(1) 概念
肺気腫は,呼吸細気管支と肺胞が拡張し破壊される疾患です。
肺胞の拡張,破壊により,息を吸うときには肺に空気が入っていきますが,吐き出すときにうまく空気が肺から出て行かなくなります。
また,肺胞の破壊のため,酸素と二酸化炭素の交換ができなくなります。
遺伝的要因として,α1-アンチトリプシン欠損症があります。
α1-アンチトリプシンは蛋白分解酵素阻害物質です。
α1-アンチトリプシンの主な作用は,好中球エラスターゼが肺胞に損傷を与えるのを予防することです。
エラスターゼはタンパク質を分解する作用があります。
そのため肺胞に損傷を与えてしまいます。
したがって,α1-アンチトリプシンがないと,肺胞が損傷を受け,肺気腫にかかりやすくなります。
ただ,日本での発症頻度は極めて低く,現在13家系の報告しかありません。
次に,慢性気管支炎は,気管支内における持続性あるいは反復性の粘液分泌の過剰状態をいいます。
慢性気管支炎には,休業補償のための定義があり,痰を伴う咳が連続して2年以上,毎年3カ月以上続くとされています。
いずれも,慢性の呼吸器疾患であり,死よりも恐ろしい病気として知られています。
ただ,こう言っても,気にしない人は気にしないんだよね。
どうせ先の話だからって言ってね。
粘液が気道に絡み付いています。
(2) 症状
① まず,肺気腫の自覚症状としては,咳,痰,運動時(労作時)の息切れ,喘鳴(ぜんめい),動悸などがあります。
② また,食欲不振による栄養失調により体重減少が起こる場合があります。
呼吸が苦しくて食欲がなくなるんだ。
そのぐらい苦しいんだよ。
③ 身体的な所見としては,呼気時の呼吸困難からチアノーゼを呈し,指先や唇などの皮膚が青紫色になります。
④ また,肺の弾力性がなくなり,吸気(息を吸うこと)はできるが,呼気(息を吐くこと)が十分に出来ないため,肺の中に空気が残り,肺が持続的に膨らんでいる状態になります。
これをビール樽胸郭といいます。
上の上の図の右側です。
⑤ さらに,手指または足指の末梢指節の軟部組織の腫大(しゅだい)によって,爪が太鼓のバチのようになることがあります。
これをばち状指(ばちじょうし)とか,ばち指(ばちゆび)といいます。
バチ爪(ばちづめ)という人もいます。
上図で指先が太く丸くなっているのが分かりますか。
慢性の心疾患・肺疾患などで見られます。
⑥ それから,肺の機能低下によって,肺の血管抵抗が増大します(肺の血の流れが悪くなります。)。
そのため,症状が進むと右心不全となり,静脈の流れが悪くなり肝臓が腫れる肝腫大(かんしゅだい)や末梢の浮腫(ふしゅ)・むくみ,頸静脈の怒張(どちょう)等が起こります。
これは,肺に血を送っているのが右心だからです。
これを肺性心といいます。
肺性心は,肺の機能低下が起こると生じます。
そのため,慢性閉塞性肺疾患,肺結核後遺症,肺線維症などで生じることになります。
次に,慢性気管支炎の症状では,起床時に咳をともなった粘液性の痰を出します(中年以降)。
① 粘液が過剰に分泌され気道が狭くなり呼吸がしにくくなるため,ちょっとした運動や過労などでもすぐに息切れするようになります。
② 肺気腫と同様に,チアノーゼやばち状指なども表れます。
呼吸困難の程度を客観的に表現する指標としてヒュー・ジョーンズ分類があります。
Ⅰ度 | 同年代の健常者と同様の生活・仕事ができ、階段も健常者なみにのぼれる |
Ⅱ度 | 歩行は同年代の健常者並にできるが,階段の上り下りは健常者なみにできない |
Ⅲ度 | 健常者なみに歩けないが,自分のペースで1km(または1マイル)程度の歩行が可能 |
Ⅳ度 | 休みながらでなければ50m以上の歩行が不可能 |
Ⅴ度 | 会話や着物の着脱で息がきれ,外出ができない |
(3) 検査
COPDの検査は,「喀痰検査」と「肺機能検査」によって行われます。
喀痰検査では,朝,起きたときに出る痰を採取し,その量や色,粘度,細菌の有無,気管支壁からはがれ落ちた細胞や白血球などを検査します。
肺機能検査では,1秒率の低下を見ます。
1秒率が70%未満になると,COPDを疑います。
1秒率が低下するということは,息が吐けないということを意味します。
そのため,残気量の増加が見られます。
次に,他の病気との合併などを調べるために,胸部X線撮影やCT検査,血液検査なども行います。
胸部X線撮影では,ビール樽様に胸郭が変形したり,肺の膨張によって横隔膜が下がります。
上図は横隔膜が下がっている様子です。
さらに,膨張した左右に肺に挟まれて心臓は細長くなります。
これを滴状心(てきじょうしん)といいます。
(4) 治療
① COPDの原因は,多くの場合喫煙です。
したがって,第一に禁煙です。
② 次は薬物療法です。
まず,気管支を拡げるために,β2刺激薬(吸入・貼付),抗コリン薬,テオフィリンなどが使われます。
β2刺激薬は,交感神経のβ2受容体に作用して気管支を拡張させます。
抗コリン薬は,アセチルコリンの働きを抑制します。
私たちの身体には,迷走神経と呼ばれる副交感神経があります。
この迷走神経の末端から出されるアセチルコリンは,気管支を収縮させる働きがあります。
抗コリン薬は,このアセチルコリンの働きを抑制することで気管支を拡張させます。
テオフィリンはキサンチン誘導体になります。
気管支を広げるためには気管支の壁の筋肉「気管支平滑筋」をリラックスさせることが必要です。
キサンチン誘導体は気管支平滑筋の細胞に直接働いてリラックスさせ,気管支を拡張します。
次に,炎症を抑えるためにステロイド薬が使われます。
一般的には,吸入ステロイド薬が使われています。
プロピオン酸フルチカゾン(フルタイド),ブデソニド(パルミコート)などです。
さらに,感染による悪化を食い止めるために抗生物質が使われます。
また,痰を出したり溶かすために,去痰薬や去痰溶解薬も使われます。
去痰薬は,喀痰の粘りけが強いような時に補助的に用います。
③ 在宅酸素療法
COPDの症状が進行して,血中の酸素が不足すると呼吸不全になります。
高度の呼吸不全には,長期的な酸素吸入を行います。
ただし,肺気腫では肺胞で換気が十分に出来なくなり,低酸素血症(動脈血中の酸素が不足した状態)だけでなく,高炭酸ガス血症(動脈血中の二酸化炭素が溜まってしまう状態)でもあります。
そのため,高濃度の酸素吸入をを行うと,高炭酸ガス血症が悪化して中枢神経の抑制が起こり,意識障害となります。
いわゆる,CO2ナルコーシスです。
そのため,酸素吸入は低濃度の酸素から吸入させなくてはなりません。
また,鎮静剤の投与は呼吸を抑制するため,高炭酸ガス血症を悪化させます。
そのため,鎮静剤は禁忌とされています。
やってはいけないことですね。
④ 呼吸リハビリテーション
腹式呼吸は肺の負担を軽くしてくれます。
鼻から息を吸いお腹を膨らませ,吐くときは口をすぼめてゆっくりと吐きます。
いわゆる口すぼめ呼吸です。
口をすぼめることによって口腔内圧(口の中の圧力)が上昇します。
それは,気道(喉)にも波及します(気道の圧力も上がります)。
閉塞性肺疾患は,気道が詰まって(閉塞して)空気の通りが悪くなるのだから,この圧力によって詰まりが解消されます。
それで自然と口すぼめ呼吸をしてしまうんだ。
実際,肺気腫の患者には,息を吐くときに口をすぼめる人がいます。
また,テーブルに両腕をついて体を支え,前かがみになって行う呼吸が楽だと感じる人もいます。
これは横隔膜の機能を改善しようとしていることになります。
(5) 看護
看護のポイントとしては,気道を清潔に保つようにします。
そのための排痰や体位ドレナージ法を指導します。
看護の授業でやったでしょ。
それから,先ほどの腹式呼吸や口すぼめ呼吸などの指導です。
感染予防のための,うがいや,手洗いなどです。
咳嗽(せき)発作時には,起坐位をとらせるなどもあります。
最後は過去問です。
問題1 閉塞性換気障害を起こす疾患はどれか。
1 気管支喘息
2 肺気腫
3 肺線維症
4 粟粒結核
問題2 病変の進行とともに肺胞換気量は低下する。
問題3 肺気腫では1秒率が低下する。
問題4 初発症状には運動時呼吸困難が多い。
問題5 肺機能検査の結果は,拘束性障害を示し,肺活量は著明に減少している。
次は拘束性肺疾患です。
拘束性肺疾患は,肺が広がらなり小さく硬くなる疾患です。
そのため,肺活量が低下するので,1回の呼吸が浅くなる分を呼吸回数が増えることで代償します。
拘束性肺疾患には,間質性肺炎,肺線維症があります。
拘束性肺疾患では肺が硬くなるので息が吸えなくなります。
先ほどの閉塞性肺疾患では息が吐けなくなりますが,拘束性肺疾患では息が吸えなくなります。
どっちも,呼吸が苦しくなるね。
4 間質性肺炎(肺線維症)
(1) 概念
間質性肺炎は,肺胞壁が何らかの原因で炎症を起こし,次第に肺胞壁が厚くなるとともに硬い組織(線維化)へと変化する疾患です。
間質性肺炎とは,炎症に焦点をあてたもので,線維化に焦点をあてると肺線維症となります。
つまり,同じ疾患を炎症と線維化のどちらに重点を置くかの違いです。
また,特発性間質性肺炎とか特発性肺線維症と呼ぶ場合があります。
この場合の「特発性」とは,原因不明という意味で使われています。
間質性肺炎では,肺コンプライアンスが低下します。
肺コンプライアンスとは,物体が変形した時に元に戻ろうとする性質をいいます。
肺コンプライアンスが低下するとは,肺が伸展しなくなっているということです。
つまり,肺の膨張・収縮が妨げられ,「硬く」小さくなることを意味します。
その結果,肺のガス交換効率が低下して,酸素の拡散が妨げられます。
(2) 症状
この疾患では,痰のない咳(乾性咳嗽 かんせいがいそう)が一つの特徴となります。
痰は気管支や肺胞の炎症で分泌されるため,線維化すると出なくなります。
また,身体を動かした時に息苦しさがみられます。
さらに,患者の中には,ばち状指がみられる場合があります。
(3) 検査
胸部X線撮影やCTでは,すりガラス様の陰影が特徴的です。
進行すると,線維化を反映して蜂の巣状になっていきます。
これを,蜂巣肺(ほうそうはい)とか蜂窩肺(ほうかはい)といいます。
上図の肺のイラストのようになります。
また,胸部聴診音では,パチパチという捻髪音(ねんぱつおん)が知られています。
これは,マジックテープをはがす音に似ているため,メーカー(ベルクロ社)にちなんでベルクロラ音と呼ばれています。
さらに,呼吸器疾患のため,ばち状指が見られる場合があります。
(4) 治療
対処療法ではありますが,炎症を抑えるためにステロイドホルモン(プレドニゾン)や免疫抑制剤などが使用されます。
免疫抑制剤としては,アザチオプリン(イムラン),シクロホスファミド(エンドキサン)などがあります。
ただし,間質性肺炎に対しては,ピルフェニドンのみが有効性を証明しています。
これが特効薬になるのでしょうか?
また,呼吸不全に対しては人工呼吸器の導入なども行われます。
さらには,肺移植というところでしょうか。
(5) 看護
ステロイドや免疫抑制剤を使っている場合には,感染症予防が重要になります。
また,息苦しいですから,死の恐怖が強く起きます。
そのためのメンタルケアも重要です。
拘束性肺疾患では間質性肺炎または肺線維症を理解すれば十分ですが,塵肺(じんぱい)も拘束性肺疾患の一つです。
粉塵の吸入により肺の組織が線維化し,硬くなって弾力性を失ってしまった疾患です。
国試では通常出題されないので割愛します。
そして最後は過去問です。
問題6 特発性間質性肺炎(肺線維症)での患者は拘束性肺機能障害を起こす。
問題7 間質性肺炎では,炎症が気管を中心に起こり,細胞に及んでいる。
問題8 湿性咳は初期の結核,胸膜炎,肺線維症,肺気腫などにみられる。
問題9 胸部X線写真で横隔膜低位が間質性肺炎の特徴である。
問題10 特発性間質性肺炎(肺線維症)では呼吸不全に気をつける。
以上です。
国試には関係ないところもありましたが,いかがでしたでしょうか。
個人的には,言いたりないと感じています(笑)。
次回も呼吸器疾患です。
もう少し続きます。
みなさん,お疲れさまでした。
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